線量測定の種類
・絶対(線量)測定
:その位置に与えられる吸収線量をGy単位で測定する
水吸収線量計測など
・相対(線量)測定
:基準となる吸収線量もしくは電離量に対する比率を測定する
PDDやOCRなど
絶対線量計測で用いる線量計
円筒型 (指頭型,ファーマー型)電離箱検出器
(71am41pm36、70am37、69pm38、68am82)
主にX線の測定に用いられる
ファーマー型(0.6㏄)は絶対線量計測に用いられる
電子線の場合,深さにより全擾乱補正係数の変化の影響を受ける
(小型円筒形の場合は無視できる)
・基準点
幾何学的中心
:光子線の線質指標測計測、水吸収線量計測
線量計の幾何学的な中心を基準点とする
半径変位法(0.6rcyl)
:光子線の相対線量測定
幾何学的中心から0.6rcyl線源側を基準点とする
半径変位法(0.5rcyl)
:R50≧4.0cm2の電子線の測定
幾何学的中心から0.5rcyl線源側を基準点とする
平行平板形電離箱検出器
(71pm83)
主に電子線の測定に用いられ,特に10MeV以下の電子線には平行平板型の使用が推奨される
電子線の測定の場合,全擾乱補正係数Pqが変化しないとされている
・基準点
前壁変位法:電子線の測定
標準計測法12による水吸収線量計測
(75pm83、72pm82、71pm83、69pm39、67am38、66.77、64.76.78、63.75、62.77、61.76、60.74.65)
水ファントムを用いて基準となる位置(基準深)の吸収線量を測り、各種補正を行って吸収線量を求める
ただし、 実際の測定は校正深での線量を深部線量比の値を用いて基準深線量に変換する
X線測定 | 電子線測定 | |
★線量計 | ファーマー形 | 深部電離百分率測定には平行平板型のみ 校正深測定では 平行平板型(R50<4.0cm2のとき) ファーマー型or平行平板型(R50>4.0cm2のとき) |
照射野 | 10×10cm2 | 10×10cm2(コーンを取り付ける) |
セットアップ法 | STD(TMR一定)法 100cm |
SSD(PDD一定)法 100cm |
★校正深dc | Dc=10cm | Dc=0.6×R50-0.1 g・cm-2 |
校正深から 基準深へ変換 |
TMR(10cm,10×10cm2) | PDD(dc,10×10cm2) |
・陽子線、炭素線の校正深:SOBPの中心
★R50(深部線量半価深)
(76am43、71pm83)
吸収線量が50%になる深さ
深さで阻止能比が変わるため2通りの式がある
R50 = 1.029・I50-0.06 (I50≦10cm)
R50 = 1.059・I50-0.37 (I50 >10cm)
平均入射エネルギーE0=2.33×R50
★I50(深部電離量半価深)
ビーム軸上での水中の深部電離量曲線がその最大値の50%になる深さ
↓電離箱について測定原理はこちら
「対策ノート:気体の電離を利用する検出器」

校正点線量DW,Qから基準点線量Drへの変換
$$基準点線量Dr=\frac { { D }_{ W,Q } }{ TMR(10cm,10×10{ cm }^{ 2 }) } (光子の場合)$$
$$基準点線量Dr=\frac { { D }_{ W,Q } }{ 校正深PDD } (電子の場合)$$
校正点水吸収線量DW,Q
(62.74、61.78)
DW,Q = MQ0×ND,W,Q0×kQ,Q0
MQ0:ユーザ電離箱表示値(補正後)
ND,W,Q0:水吸収線量校正定数
kQ,Q0:線質変換係数
ユーザ電離箱表示値Mrawに対する補正
(74am82、71pm36、61.76)
MQ0 = Mraw×kTP×kelec×kpol×ks
*補正係数の並び順も重要で、式の左側の係数から順番に補正していく
(1)温度気圧補正kTP
$${ k }_{ TP }=\frac { 273.2+t }{ 273.2+22 } ×\frac { 101.33 }{ p } $$ 温度をt(℃)、気圧をp(kPa)とする
電離箱が測定環境と温度湿度平衡状態に置く必要がある
温度が高く、気圧が小さいほど
→ 係数が大きい
→ 電離量が少ない
0.3℃または、1hPaの変化で約0.1%の変化となる
(2)電位計補正kelec
一体校正ではkelec=1となるが、分離校正では変わってくるため、注意が必要となる
(3)極性効果補正 kpol
$${ k }_{ pol }=\frac { |M^{ + }|×|M^{ – }| }{ |M|^{ 2 } } $$ 電離箱線量計の印加電圧の極性を変化させることによる応答特性の違いを補正する
平行平板型では補正が大きく、ファーマー型では補正は小さい
(基本的にkpol=1.000にかなり近い)
(4)イオン再結合損失補正ks
(72pm83、68am80.am82)
$$ks=a_{ 0 }+a_{ 1 }(\frac { M_{ 1 } }{ M_{ 2 } } )+a_{ 2 }(\frac { M_{ 1 } }{ M_{ 2 } } )^{ 2 }$$
イオン再結合には「初期再結合」と「一般再結合」があり、
補正するのは一般再結合であり、2点電圧法等で測定し、Boagの理論に基づいているかをJaffe poltで確認する
測定時の印加電圧が低い、線量率が高い、LETが大きいほど
→ 補正係数は大きい
また、Micro型電離箱では2点電圧法が成立しないことがあるため、注意が必要
パルス放射線(一般的)と連続放射線では計算式が違う
・初期再結合
一つの飛程で生じたイオンによるもので、線量率に依存しない
放射線治療レベルの線量測定では無視できるレベル
高LET放射線では優勢となる
・一般再結合
複数の飛程で生じたイオンによるもので、線量率、電離箱の印加電圧、大きさ、形状に依存する
2点電圧法によって補正可能
*ステム効果
:プリアンプやケーブルが放射線にさらされて指示値が変わる現象
水吸収線量校正定数ND,W,Q0
標準計測法12より水吸収線量校正定数ND,W,Q0は医用原子力技術研究財団による校正によって与えられる
ND,W,Q0 = DW,Q0÷MQ0
DW,Q0:標準(基準条件60Coのγ線)での水吸収線量
MQ0:ユーザ電離箱表示値(補正後)
*以前までは以下の式より求めていた
ND,W,Q0 = KD,x÷Nc
KD,x:校正定数比
Nc:コバルト校正定数
線質変換係数kQ,Q0
(75pm38、71am41、68am82.pm82、67pm82、64.74、61.66、60.65)
kQ,Q0 = ND,W,Q÷ND,W,Q0
ここで線質Q0(60Co)とQが電離箱の測定値で等しくなるように照射した場合(MQ=MQ0)、
kQ,Q0 = DW,Q÷DW,Q0
$${ k }_{ Q,Q0 }=\frac { { \left\{ { (\frac { LΔ }{ ρ } ) }_{ water,air }×Wair×P) \right\} }_{ Q } }{ { \left\{ { (\frac { LΔ }{ ρ } ) }_{ water,air }×Wair×P) \right\} }_{ Q0 } } $$
$${ (\frac { LΔ }{ ρ } ) }_{ water,air }:水/空気平均制限質量衝突阻止能比$$*上記の式より、光子線では高エネルギーほど線質変換係数は小さくなる
擾乱補正係数P
(75am43、71am40pm38、70am37)
P= Pwall×Pcav×Pdis×Pcel
(1)Pwall:壁補正係数
電離箱壁及び防水シースの補正
電子線で1.0、光子線では線量計ごとに求められる
(2)Pcav:空洞補正係数
円筒型電離箱で光子線の測定ならば1.0、平行平板型電離箱で電子線の測定ならば基本的には1.0となる
(3)Pdis:変位補正係数
実効中心と幾何学中心との補正
(4)Pcel:中心電極補正係数
電離箱の電極材質の補正
線質指標
(73am38、69pm38、60.72)
:与えられているkQ,Q0を求めるために必要な線質の指標
・光子:TPR20,10
・電子:R50
・陽子線、炭素線:残余飛程Rres(Rp-Zref)
*実用飛程Rp
:SOBP最深部より深部で吸収線量が最大値10%となる深さ
*基準深Zref
:SOBPの中心
コメント
初めまして
いつも参考にしております。
質問なのですが、温度気圧補正係数の式で1013.3/pの分子は101.33では無いでしょうか?
いつもご利用ありがとうございます
単位の記載がないため、誤解を生んでしまい申し訳ございません
当サイトではヘクトパスカル表記のため、1013.3とありますが、キロパスカル表記では101.33となります
試験の際には単位もきちんと記載されていると思いますので、提示された単位に合わせて式を使ってください
国家試験でもキロパスカル表記で出題されていたため、対策ノートの記載もキロパスカル表記に修正致しました
ご指摘ありがとうございます