MRI造影剤の種類
1. Gd(-DTPA,-DOTA,etc.)系造影剤
(76pm17、73pm19,72pm15,71pm18,71am91,70pm18,67am17,61.34.36.41,60.37)
:常磁性の細胞外液性造影剤
ガドリニウムは重金属イオンで毒性が高いため,キレートを形成し毒性を軽減させたもの
経血管注射造影剤であり、静脈内投与により全身性に分布する
正常脳脊髄では血液脳関門を通過できないが, BBBが破壊されている腫瘍などの病変部には入り込む
・陽性造影剤,高濃度で陰性造影剤となる
通常の濃度での投与によりT1値短縮が優位となり,T1強調画像で信号強度は強くなる
濃度を増加させるとT2値短縮が優位となり,信号強度は小さくなる
造影剤の濃度と信号強度は比例しない
・投与により病変部が高信号になると,脂肪との識別が困難になるため,脂肪抑制撮像法を併用して撮像
・排泄:尿
・ガドリニウム系造影剤の副作用
ヨード系造影剤に比べて副作用の発現率が少ないが,重篤な合併症を引き起こすこともある
禁忌
:造影剤に過敏症をもつ患者
原則禁忌
:気管支喘息や重度の肝・腎障害をもつ患者
慎重投与
:アレルギー体質の患者
新生児
:糸球体濾過や腎臓クリアランスが成人より低いため生物学的半減期が長くなる
産婦
:投与後授乳を24時間控える(24時間以内にすべてが尿中に排泄)
腎機能が低下している患者
:腎性全身性線維症(治療法は未確立)を発症することがある
腎機能評価にクレアチニン値→推定糸球体濾過量(eGFR)
2. SPIO(超常磁性体酸化鉄コロイド)
(71pm18,70pm18,62.39)
:超常磁性の肝特異性造影剤
経血管注射造影剤であり、静脈内投与により肝臓の細胞内皮系細胞(クッパー細胞)に貪食されて取り込まれる肝特異性造影剤
・微小酸化鉄粒子であり,正常組織のT2*値を短縮させる効果により陰性造影剤として使用される
・(転移性)肝癌の診断に利用される
・禁忌
:ヘモクロマトーシスや鉄過敏症の患者
3. Gd-EOB-DTPA造影剤
(72am24,71pm18,68am18.am21,65.30)
:常磁性の肝特異性造影剤
Gdキレート製剤に脂溶性を加えた構造で,造影機序は他のGd系造影剤とほぼ同様
肝細胞への特異性のある造影剤であり,Tl強調画像にて正常肝細胞が高信号として描出される
・経血管注射剤であり、静脈内投与により肝臓のダイナミックMRI検査に利用されてい
・1回の投与で血流評価と質的診断が可能である
・主に胆汁排泄される
4. クエン酸鉄アンモニウム
(70pm17,66.32.35,64.34)
:常磁性の経口消化管造影剤
・基本的に陽性造影剤、高濃度で陰性造影剤となる
普通の濃度ではT1強調像で消化管内腔を高信号に描出(陽性造影剤)
高濃度でMRCP撮影時に胃・十二指腸の信号を低下させ,胆管・膵管とのコントラストを高める
5. 塩化マンガン四水和物
(71pm18,70pm17,66.35,64.34)
:常磁性の経口消化管造影剤
・陰性造影剤として、MRCPで消化管内液の信号を落とすのに使用される
・マンガンが含有されたブルーベリージユースの経口投与によりTl値およびT2値が短縮される
*陽性造影剤
:T1短縮で信号強度を大きくする
*陰性造影剤
:T2短縮で信号強度を小さくする
・MRI造影剤の比較
分類 | 細胞外液性造影剤 (Gdキレート系) |
肝特異的造影剤 (Gd-EOB-DTPA) |
肝特異的造影剤 (SPIO) |
分布 | 細胞外液 | 細胞外液と肝細胞 | 血液とクッパ―細胞 |
造影効果 | 主にT1強調で 造影剤が高信号 |
主にT1強調で 造影剤が高信号 |
主にT2強調で 造影剤が低信号 |
目的 | 血行動態の差異の可視化 | 血行動態と肝細胞機能の差異の可視化 | クッパー細胞の有無または機能の差異の可視化 |
(65.30)
コメント
ガドリニウム系造影剤で重度の腎障害がある患者は禁忌だと思われます
ご指摘の通り、ガドリニウム系造影剤では重度の腎障害が「禁忌」である場合もあります
キレートの型によって「禁忌」か「原則禁忌」かが変わるので表記を変更いたしました
ご指摘ありがとうございます
「重篤な腎障害がある患者」についてですが、各造影剤の添付文章を見ると線状型なら「禁忌」、「環状型」なら「原則禁忌」となります。
これは「対策ノートの人」はご説明された通りです。
2014年に、kandaらがRadiologyに発表した論文において、「線状型は環状型に比べて、脳への沈着がしやすいと報告されました。
平成29年11月には厚生労働省から「ガドリニウム造影剤を用いた検査の必要性を慎重にすること」「線状型ガドリニウム造影剤は環状型ガドリニウム造影剤の使用が適切ではない場合に投与すること」などの通知文が発表されました。
現在では、線状型はほとんど使われていないのが現状で、主に環状型を使用しています。
従って、「重篤な腎障害がある患者」については、「原則禁忌」に分類されて良いと思いますし、過去の国家試験や、書籍においてもその様に記載されています。
コメントありがとうございます
ご指摘のお通りです
一点だけ、思うところがあるのは、過去の国家試験で「重篤な腎障害がある患者」に関する「(原則)禁忌」に関する問いは第61回以降出題されていないように思います(見落としがあれば申し訳ありません)
この時点(2009)では上記のキレートの型による障害の違いが一般に認知されておらず、この時点ではすべての造影剤が「原則禁忌」であったのではないかと考えます
その後、ご指摘にあった論文等(2014)にて線状型の問題点が指摘され、線状型の造影剤が「禁忌」となり、そのような造影剤は使用しずらいため、売れなくなり、ほとんど使用されなくなった経緯があると思います
このような複雑な経緯があるため、近年では「重篤な腎障害がある患者」に関する「(原則)禁忌」に関する問いが出題されなくなってると考えています
国家試験レベルでここまで把握してる必要は全くないので、ノートの内容は「原則禁忌」のみにさせて頂きました
「MRI認定技師」のほうでは対応を考えます